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2012/07/17

ブナ沢が死んだ

 去る5月17日掲載の渓流情報でブナ沢の状況(泥水がすごい)を掲載しましたが、7月1日当漁協の役員で「新潟県の渓流釣り」の筆者の1人である蒲澤 新治氏が状況を見てきて情報を寄せられましたのでここに掲載します。

平成24年7月17日 五十嵐川漁業協同組合 事務局長 T

 「ブナ沢が死んだ」泥川となったブナ沢に降り、呆然と立ちすくんだ。イワナも水生昆虫もいない。山菜も草木も何もかもが泥の下になってしまった。回復まで何年かかることか想像もつかない。こんなひどい川は見たことがない。

 平成24年7月1日、集落の用事を足した後、午後からブナ沢の状況を見に行くこととした。  7.29水害後、大谷川の濁りが取れない原因がブナ沢にあるとの情報が有った。漁協の河川調査のため、国道工事用道路の通行許可証を持って大谷川に向かう。日曜日のため通行止めゲートには誰もいない。大谷川沿いの工事用道路を上流に車を走らせる。途中、大柄沢の橋の上から大谷川を覗く。大谷川唯一の通らずであった渕は土砂で埋まり、水色は白っぽい。渓全体が小砂利で埋まり、大石と渕が連続する渓谷美の面影はない。谷底からかなり上まで草木もなく磨かれたように白くなっている。岩菅橋の桁下まで土石流の痕跡が見られた。

大谷川大柄沢付近

ボタ橋を渡りブナ沢出合を覗く。大谷川は澄んでいるが、10日間ほど雨が降っていないのにブナ沢から茶色の水が流れ込んでいる。遠く、高清水沢源頭に白っぽい大規模な崩落地が望まれる。原因はそこではないかと直感し、ブナ沢中流から崩壊地を目指すこととした。12時30分、車を止め大谷川へ降り立つ。大量の土砂に埋まった渓に細々ではあるが澄んだ水が流れている。イワナの気配は全くない。飛び石伝いに対岸に渡り、カヤツミ沢出合の「中島」登り口を目指す。大谷川とブナ沢の分水嶺を通称「中島」と言い、植林、狩猟、山菜・舞茸狩りの道が「空堀」まで通じている。20年ぶりの中島は藪がひどいものの踏み跡はしっかりしていた。小1時間の急登の後、ブナ沢中流が見えた。どうも様子がおかしい。沢沿いにまったく草木が見えず、谷底が丸見えである。不安な気持ちで杉林の鞍部から、ゲズリ谷地沢出合付近に降りる。

ブナ沢中流 入渓点付近

  異様な風景である。あたり一面泥だらけ。堆積した膨大な土砂の中を白濁した水が流れている。渓の両岸は20m位上まで草木が全くなく、泥壁を塗ったようになっている。小屋程の大きさの巨岩が転がり、直径1m以上の巨木が倒れている。想像を絶する土石流に襲われたものであろう。魚影が濃く、山菜も豊富であった谷は見る影もない。あのイワナ達は絶滅した。不安は的中し、魚影確認のため持ってきた竿は出さずじまいであった。

ブナ沢 千間滝付近

 土石流発生源探索のため、遡行に専念する。最近の干天で泥は乾き、沢全体が埃っぽく泥臭い。表面だけが乾いた所は膝まで潜る。山菜取りと思われる足跡に熊とカモシカの足跡が混じる。足型の様に泥が固まっている。難所の「千間滝」20mは左の泥塗りの側壁をよじ登り、尾根越しに巻く。藪が全くなくなっているため、高度感が増して久々に恐怖を感じた。滝を越えるとブナ沢は3本に分かれる。高清水沢の綺麗な水でのどを潤し、濁流の小沢とブナ沢本流が合流する3段滝に取りつく。ブナ沢は濁ってはいないがあまりきれいな水ではない。土石流は小沢から来たものであることは一目瞭然である。一段目右岸を直登、対岸に移り藪掴まりで2段3段を巻き滝上に出る。滝上はブナの巨木の倒木帯となり、沢がなくなった。土砂崩れによりできた小さな池を越えると、赤テープのある八十里道の横断ヶ所に着いた。奥までは見えないが、5a程の池ができていた。源流帯のイワナだけは無事であってほしいと願い、時間がないので先の確認はあきらめる。ブナ沢と高清水沢の間の八十里道は完全崩壊した。途方もない規模の土砂崩壊が発生した為、地形が一変していた。幾度となく通った所だがルートがわからない。最近付けられた赤テープに助けられ高清水沢対岸に付き安堵する。

源頭崩落地

高清水沢とブナ沢の間にある小沢の源頭崩壊がブナ沢の濁りの原因であった。696.9mの水準点の上部、標高800m付近から幅100m程でブナ沢出合まで長さ500mにわたり崩落していた。知人の話では昨年の舞茸採りの時には異常はなかったとのことであった。昨年の大雨で緩んだ地盤が今春の雪解けで一気に崩落し、土石流となってブナ沢を襲ったものと思われる。雨が降るたびに膨大な泥が流され濁流となる。水害前のブナ沢に回復するまで何年かかるかわからない。

高清水沢から丸倉へ向かう。ところどころに小規模な土砂崩れがあるものの、道はしっかりしていた。イワナ谷地沢ではじめてイワナを見た。林道終点であったスクウ橋は噂どおり、水害で落橋していた。ガッコ沢はかなり土砂が堆積しているものの水質は良く、イワナ生存の可能性は高い。杣道化した林道も昨年より崩落ヶ所が多い。ガッコ沢と栃中瀬沢の合流点の砂防堰堤付近は林道対岸が一山丸ごと滑っていた。水害前から大谷川本流の濁りの原因であったところである。最後に舗装された国道工事用道路を30分程でブナ沢入渓地点に戻った。次は各沢の源流部のイワナの生息堪忍をしてみたいと思う。

 

 ブナ沢上の池

ブナ沢下の池

三段滝上からの濁流の小沢(右)と高清水沢(下流)

崩壊地

 

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